ワーカーゼリーとローヤルゼリーの違い
ミツバチが作る食べ物といえば、ハチミツとローヤルゼリーがすぐに思いつくでしょう。実は、ミツバチはそれ以外にも食べ物を作っているのです。
そのうちのひとつが、働き蜂の幼虫に与えられるワーカーゼリーと呼ばれるものです。
ローヤルゼリーとワーカーゼリーには、どのような違いがあるのでしょうか。
女王蜂と働き蜂を決めるものは何か
まず知っておいてほしいのは、女王蜂と働き蜂の幼虫には、どのような違いがあるのかということです。結論から言えば、女王蜂も働き蜂も生まれた時点では、同じ雌の幼虫なのです。
にもかかわらず、なぜ女王蜂と働き蜂という差が生じるのでしょうか。
女王蜂はローヤルゼリーを食べている
実は女王蜂と働き蜂の違いを決めるのは、与えられている餌なのです。女王蜂の幼虫は王台と呼ばれる特別な部屋に住んでいますが、実は生まれた時点では働き蜂の幼虫と全く同じです。
王台とそれ以外の巣穴の違いは、常にローヤルゼリーで満たされているかどうかです。
女王蜂は幼虫のころだけでなく、成虫になってからもローヤルゼリーを食べています。
この特別な餌によって、何の変哲もない雌の幼虫が女王蜂となり、ミツバチの巣という大家族の主として成長していくというわけです。
ワーカーゼリーは働き蜂が食べる
では、働き蜂は何を食べて成長しているのでしょうか。実は働き蜂の幼虫にも、卵からかえってから3日間は、ローヤルゼリーによく似た餌が与えられます。
この餌をワーカーゼリーといいます。
ローヤルゼリーとワーカーゼリーはいずれも花粉を主原料としているため、含有成分を見ると大きな違いはありません。
ただ、栄養素の含有量を見ると、ワーカーゼリーはローヤルゼリーに及びません。
ワーカーゼリーは乱暴な言い方をすれば「劣化版ローヤルゼリー」というわけです。
女王蜂よりも劣った餌を食べ続けることによって、生涯、女王蜂に仕える働き蜂として成長していくというのが、ミツバチの仕組みなのです。
働き蜂の幼虫は女王蜂になれないのか?
このように書くと、もし働き蜂の幼虫として生まれた個体であっても、ワーカーゼリーではなくローヤルゼリーを与え続ければ女王蜂になるのではないかと思う人もいるでしょう。そのあたりはどうなのでしょうか。
王台には3種類ある
実は王台には3種類あります。まず、巣の個体が増えすぎたとき、巣分かれをするための新たな女王蜂を育てるために作られる繁殖王台です。
次に、女王蜂が年老いて産卵数が低下してきたときに、後継者を作るために作られる換王王台です。
そして、何らかの理由で巣から女王蜂がいなくなったときに作られる変成王台です。
繁殖王台と換王王台は巣の端の方に作られるのに対し、変成王台は働き蜂の幼虫が住んでいる巣の中心部分に作られるという違いがあります。
もともとは働き蜂として生まれた変成王台の幼虫
なぜ変成王台だけが違った場所に作られるのかというと、実は変成王台の中の幼虫はもともと、働き蜂として成長するはずだった個体だからです。女王蜂がいなくなってしまったため、急遽、ローヤルゼリーを与えて女王蜂に仕立て上げようというのが変成王台なのです。
このため、変成王台は繁殖王台や換王王台と比較すると、貧弱な作りになっています。
上述のように、働き蜂の幼虫は女王蜂の幼虫と全く同じなので、ローヤルゼリーを与え続ければ女王蜂として育ってくれるというわけです。
女王蜂は生まれながらに女王蜂ではなく、餌によって女王蜂になるということを、ミツバチ自らが証明しているというわけです。
雄蜂用のゼリーもある?
ミツバチの巣には女王蜂と働き蜂以外にも、雄蜂が住んでいます。繁殖時以外には何の役にも立たない雄蜂ですが、幼虫のときにはドローンゼリーという専用の餌が与えられています。
最近では男性の精力アップのためのサプリメントに配合されていることもありますが、日本ではそれほどなじみはありません。
このドローンゼリーも、栄養だけを見ればローヤルゼリーと大きく変わるところはありません。
ちなみに、雄蜂は受精していない卵から生まれるため、染色体数が雌の半分になっています。
このため、仮に雄蜂の幼虫がローヤルゼリーを食べ続けても、女王蜂として成長するようなことは絶対にありません。
雄蜂は最初から雄蜂として生まれてきているのです。
まとめ-餌の「質と量」が女王蜂を作る
上述のように、ローヤルゼリーとワーカーゼリー、ドローンゼリーには、含まれている栄養だけを見れば大きな差はありません。ただ、その質となると、ローヤルゼリーが最も優れているのです。
さらに、ワーカーゼリーは生後3日間しか幼虫に与えられないのに対し、ローヤルゼリーは成虫になってからも女王蜂に与えられ続けるのです。
ローヤルゼリーとワーカーゼリーの違いは含まれている栄養の質と量であり、その違いが同じ幼虫を女王蜂と働き蜂という別種の個体に育てているというわけです。